No.582 刑務所内で佐藤康行講演「人生自由自在」を聞いての感想文(1)

体験談ビフォーアフター

投稿日 : 2014年6月27日 No.582

【人生好転!】体験談

刑務所内で佐藤康行講演「人生自由自在」を聞いての感想文(1)

 十一月の行事予定を見たとき、十二日「講演」となっていたので、「あ~あ、またどこかの坊さんか偉い先生の難しい話なんだろうなあ。つまんないなあ」と正直思い、気が滅入りました。

 更に悪いこと(?)に、その講演の感想文を書くように言われ、文章を書くのが苦手な私は、それが嫌で講演当日、仮病を使って欠席しようかと考えたほどでした。

 当日、舎房を出て講堂に入り、椅子に座って待っている間も「どうかあまりややこしい話じゃないように」と心で祈りながら黙想していました。

 号令があり、目を開けてみるとステージ上に看板があり、『アイジーエー 佐藤先生・演題 人生自由自在』と書いてあり、それを見て私は、「あ~あ。やっぱりどこかの偉い先生だ。こりゃ、困ったぞ」と思いましたが、もうここまで来たらどうあがいても仕方がない。よ~し、こうなったら佐藤先生の言うことを一言も聞き漏らすまいと開き直り、腹を据えるとなんとなく気が楽になりました。

 しばらくすると、厚生統括さんの大雑把な話があり、いよいよ講演の始まりです。

 するといきなり女性の声のナレーションが入り、佐藤先生のプロフィールがテープから流れてきました。

 なかなか凝った演出の幕開けです。

 やがてそのテープも終わり、佐藤先生の登場です。

 パッと見た感じは、どこにでもいる普通のオジサンというのが第一印象です。

 が、この人どこかで見たことがあるなあと思い、さっき聞いたプロフィールテープの内容を思い返してみて、ハタッと気づきました。

 東京・神田で立ち食い形式のステーキ店「くいしんぼ」を開店したオーナー、その人ではありませんか。

 二、三ヵ月前のテレビで、大声で店長以下社員に喝を入れていた人で、なんてタフで精力的な人なんだろうという印象が残っています。

 今、その人が目の前で話をしているのだと思うと、なんとなく親近感を覚え、講演が始まる前の緊張感やプレッシャーがまるで嘘のようにスーっと消え、リラックスでき、次はどんな話が出るのかと楽しみになってきて、どんどん引き込まれていきました。

 佐藤先生は地元、北海道・美唄の生まれで、貧しい家庭に育ち、つっかえ棒をした家に住んでいたほどで、それが恥ずかしくて友達を家に呼べなかったという苦い経験もあり、その他いろいろな苦労などエピソードを交え、わかりやすく語りかけるように話してくれ、そのときの気持ちが滲み出て、こちらにシッカリ伝わってきました。

 もう貧乏は嫌だ。きっと金持ちになってやるぞという一心で、中学を出ると同時に東京に出てきて、定時制の学校に通うかたわら、皿洗い、化粧品・宝石のセールスマンなどと職を変え、ついには年商何十億円という実業家になるまでには、数え切れないくらいの失敗、苦労があったはずなのに、それら苦労をものともせず、つぎつぎと乗り越え、自分の人生の糧、エネルギーとしていく話には、驚くものがありました。

 とくに先生の話の中で印象に残ったのが二つほどあります。

 まず一つは「人生何事もプラス思考」。

 失敗は成功のもとというように、すべて良い方、良い方と思う心。これが大事だということです。

 仕事をするにも、受け身じゃなく、積極的に自ら進んでやることが大事。

 どんな仕事でも人にやらされていると思うと嫌になるに決まっています。

 そうじゃなく、自分のために、自分から進んでやれば、辛い仕事も楽しいものになると言いたいのだと思います。

 ややもすると、われわれ受刑者はなぜ働かなくては?と疑問に思うことがあります。

が、しかし、これも社会復帰に向けての試練・糧と思えば、大した苦にならないんじゃないでしょうか。私は先生がそう言いたかったのだと思います。

 そしてもうひとつ。

「親と子の関係がうまく運べば、人生すべて円滑。親子関係は人の世の原点」この言葉に私の胸は痛みました。というのも、今回で三回目の受刑生活となります。

 が、犯罪の道に走るようになってからというもの、田舎の母には何の連絡も入れず、ただ自分自身の欲望のなすがままに生活し、今では生きているものやら、死んでいるものやら、それすら定かではありません。

 我ながらなんと情けないことか。

 いえ、今まで何度か電話をしよう、家に帰ろうと思い、途中まで行ったことはあります。

 が、そこで足が止まってしまうのです。

 怖いというか、恥ずかしいというか、勇気が湧いてこないのです。

 でも、先生の話を聞いて、チョッピリ勇気が付きました。

 まだまだ先の話ですが、ここを出所したら今度こそきっと母親の元へ顔を出そうと思います。

 会ってくれないかもしれません。それでもかまいません。

 とにかく一度、生まれ育った故郷に帰り、一からやり直してみようと思います。

 急にこんな気持ちになり、私自身、変な気分です。が、これも佐藤先生のおかげです。本当にありがとうございます。

 最後になりますが、お忙しい中、われわれ人生の脱落者のために貴重な時間を割いてくださり、本当に心からありがとうと言わせてください。額に汗をかくほど、熱弁を振るってくださり、本当にご苦労様でした。

 私は先生のいわんとしていることをよく理解し、実践し、今までたくさんの方に迷惑をかけてきた分、今度は少しでも人さまのためになるよう生きていこうと心に誓いました。
たった一度の人生だから。